片麻痺者の麻痺肢に対する身体性注意の低下 Decreased body attention of paretic limb in hemiparetic patients
<目的>効果器の不使用は、自己身体に向ける身体性注意が低下するという無視様の症状(Neglect-like syndrome)を呈すことが、疼痛を主とする複合性局所疼痛症候群の患者で知られている。このことから、運動麻痺を呈した片麻痺者においても、麻痺肢の不使用により、麻痺肢への身体性注意が低下すると考えられる。しかしながら、麻痺肢に向ける身体性注意の量は明らかになっていない。本研究は、麻痺肢の身体性注意を計測する事を目的とした。 <方法>対象者は健常者15名、慢性期片麻痺者12名とした。課題は刺激−反応課題を用いた。机上の左右のいずれかの位置に対象者の自己手(健常者:左手、片麻痺者:麻痺手)を置き、もう一方には手の形をした模造手を配置した。プロジェクターを用い、視覚刺激を自己手の上または模造手の上のいずれかに投射した。視覚刺激の投射の際にできるだけ早くボタンを押す、反応時間を記録した。ボタンを押す反応手は健常者は右2指、片麻痺者は非麻痺側2指であった。 <結果>健常者では健常手の上に視覚刺激が投射された際の反応時間は模造手の反応時間と比較して早くなった。一方、片麻痺者では、麻痺手と模造手の反応時間に差が見られなかった。さらに、各片麻痺者の反応時間結果と発症後期間の関係には、強い負の相関が見られた。 <考察>健常者と片麻痺者の反応時間の結果より、片麻痺者の麻痺手に向ける注意量は低下していることが示された。さらに、発症後の期間が長いほど麻痺肢に向ける身体性注意の量が低下していた。このことより、片麻痺者は麻痺肢の不使用によって身体性注意が低下している事が明らかとなった。 |