上肢到達運動中の腕の剛性に対するフィードバックの効果

Feedback Contributions to Limb Stiffness in Reaching Movements

  • 植山 祐樹 (東京工業大学)
  • 宮下 英三
  • Yuki Ueyama (Tokyo Institute of Technology)
  • Eizo Miyashita

本研究では、ロボットマニピュランダムを用いて運動中のサルの腕の剛性を計測するとともに、与えた外乱に対する反応時間から、反射の種類を分別し、各反射の影響を剛性の変化として計測した。剛性とは、運動中の腕の硬さを意味しており、新たな運動を学習するときや環境に適応する際に、その運動や環境に応じて変化することが知られている。そのため、剛性を計測することで、運動の学習や生成にかかわる脳のメカニズムを探る大きな手がかりになると考えられる。本研究においては、随意運動中の剛性とは別に、外乱を付与してから25ms、50msおよび150ms以上経過した後の剛性をそれぞれ推定した。なお、それらは、脊髄反射によるshort-latency reflex、一次運野を介したlong-latency reflexおよび視覚の影響をそれぞれ受けていると仮定した。その結果、long-latency reflexの影響による剛性は、short-latency reflexによるものとは異なり、随意運動中の剛性と同様の傾向を示した。また、視覚フィードバックによる影響は、軌道を補正するように剛性を高めるのではなく、運動方向を当初の運動方向から変化させるように剛性を高めていることが確認された。したがって、一次運動野を介したフィードバックはフィードバックゲインとして、関節剛性が設定されており、随意運動は一次運動野を介すことで、最適フィードバック制御理論のような状態フィードバックによって生成され、また、視覚情報は体性感覚と同様に処理されているのではなく、その情報をトリガーとし、新たな運動を生成していると考えられる。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32